郡上八幡の歴史を活かしたまちづくり
岐阜県郡上市郡上八幡(旧八幡町)は、長良川の支流が合流する渓谷に開けた城下町である。豊かな水を活かした暮らし、夏の夜を通して辻々で開かれる「郡上おどり」等が有名で、城下町時代の雰囲気を良く残し、そこに豊かな生活が根付いている。
歴史的町並みに関しては、町の個性を形成するものとして、町民まちなみ協定が結ばれ、国交省の「街並環境整備事業」による景観整備が実施されてきた。しかし、景観規範となる町家の滅失、デザインコードには合致しているが地域性に反した新築家屋等が出現することにより、景観制度のみによる取り組みに限界を感じていたところであった。
そこで弊社受託(工学院大学後藤研究室協力)により、平成15年よりまちづくり交付金(当時)の効果促進事業を活用した「歴史的資源調査」が5年間実施された。悉皆調査の結果では、城下町内外で千棟を越える町家形式の建物を確認、さらに約100棟の町家等の実測調査を行い、その歴史文化的価値の高さを明らかにするとともに、これらが住民の生活様式と密接な関係を持つ事を明らかにした。
住民の歴史的建造物に対する意識は決して高いものではなかったが、地道な説明会や広範囲の市民を集めたフォーラム等の開催により、歴史的町並みが、水、踊りと並ぶ第三の資源として認識されるに至った。
こうした経緯を経て、景観制度と文化財制度による町並み形成を目指すべく、平成24年に「郡上市郡上八幡北町地区」が国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。その後、市の中心市街地の諸施策と連動しながら、防災計画とその実践、空き町家の活用、町並みを含む中心市街地の活性化方策などの検討を続け、現在は歴史的風致維持向上認定計画が策定され、「作り物ではない」歴史を活かしたまちづくりが進行中である。